06≪ 2017/07 ≫08
12345678910111213141516171819202122232425262728293031
個別記事の管理2007-04-03 (Tue)
イメージ通りの家並みに満足し、次に目指すは紡績工場跡地です。
電車でさらにロンドンから遠ざかる方向にあるクロムフォードという所に水力を動力とした紡績工場が、産業革命時代に作られたはずでした。
6巻2章に書かれた「製糸工場」「廃墟」の言葉から私なりに推測したスピナーズ・エンド候補の一つでしたが、色々調べていくうち、産業革命や紡績工業自体にも興味は及んでいました。
そんなわけで、一度は紡績工場跡も見てみたかったのです。トビアスは、紡績工(スピナー=Spinner)だったかもしれないし。

さて、私たちは標識に従ってベルパー駅を探し始めました。
しかし、ある程度歩くと、標識の矢印の向きが正反対になってしまうのです。つまり通り過ぎてしまっているらしいのですが、全く駅が見つかりません。わけのわからないまま同じ場所を行ったり来たり。
そこは大きめのスーパーの裏側でした。
高いレンガの壁に囲まれた狭い通路を行きつ戻りつしながら、息子は「漏れ鍋のようになっているんじゃないか」と言います。まさにそんな感じで、レンガを突付くとか、呪文を唱えるなど、何か駅に通じる決定的なものを見逃しているのではないかという気もしました。
しかし、結局、スーパー裏のまるで個人の家に通じる私道のような小道の先に、ようやく駅を発見しました。
無人駅でした。
DSC00168-1.jpg
ベルパー駅(左の道がスーパー裏から通じる下り坂)

ちょうど、「千と千尋~」で千尋が別の世界に迷い込んだ時、橋の上から覗き込んだ下に線路があったような感じで、街より低い位置に線路も駅もありました。前の記事で、家並みの奥の方でスネイプ先生を撮った写真は、左横が橋になっていて、覗き込むと下を線路が走っています。

イギリスでは乗り越しは厳禁で、行き先までの切符を持って乗らなければ高い罰金を払わなければならないというのに、切符売り場が見当たりません。途方に暮れてしまいました。
息子はタクシーを探そうと言いますが、タクシー乗り場もないのです。先に進むことも戻ることもできなくなったと思い、血の気が引きました。しかも時刻表を見ると、1時間に1本あるかないかの電車があと10分くらいで来そう。ここは何としてでもその列車に乗らなければ。
そこで、勇気を出して真っ赤なコートの若い女性の通行人に聞いてみました「where can I buy a ticket?」すると「on the train」と教えてくれました!
電車の中で買えば良いようです。その後さらに「You should~」と言ってくれたのですが、私には聞き取れず。私は何をすべきだったのか、未だにわかりません(汗)

さらに時間が近づくと、犬を連れた年配の男性がやってきてベンチに座ったので、もう一度同じ質問をしました。
するとやはり、「on the train」さらに「Ticket man」が来てくれるので、あなたは彼を呼ぶ必要がない(多分そう言ったと思う)、というようなことまで教えてくれました。なんて親切な人なんでしょう!

乗ってみたら、その通り、「Ticket man」が来て行き先を尋ね、映画のナイトバスのスタンのような感じで切符を出して売ってくれました。二人で£5(約1200円)でした。ちなみに犬連れのおじさんも乗りました。
そして、降りたクロムフォード駅も、無人駅でした。
DSC00173-1.jpg

DSC00174-1.jpg
いつの間にか、単線になっていて、行きも帰りも同じホーム。でも、以前は横に線路があったことをうかがわせる配置。

駅を出てびっくり!ここは、ベルパー以上に回りに何もない駅でした。森の中に突然駅があるというような、不思議な風景でした。
それでも、歴史的な工場跡があるという標識はあり、時々車の通るそれなりの道路がありました。緑の薫りの静かな道の横には、ゆったりと流れるそれほど幅もない川が流れて、時々人気の感じられない教会やホテルがぽつぽつとありました。そして、突然、工場が現れました。
DSC00175-1.jpg DSC00177-1.jpg
看板には、世界で最初に成功した水力の綿紡績工場、と書いてあります。

ここでは、定時に有料のガイドツアーを行っていて、次は14時からでした。30分ばかり待った後、ガイドと思われる年配の男性に、参加したいと身振り手振りで伝えてみました。私たちの他に参加者はいないようでした。でも、なかなか伝わらず、「I can't speak English」と言うと、彼は身振りも加えて「このガイドツアーは、しゃべりがメインだから、英語がわからないなら、参加は無理」というような事をいいました。(と思いました)
それでも、私は中が見たいと身振り手振りで示したら、museum(博物館)があるから、ついておいで、と案内してくれました。
工場跡の一部が資料館のようになっていたのです。案内してくれながら、彼はとても申し訳なさそうに「あなたは英語がわからない。私も中国語(Chinese)が話せないから、これで勘弁してくれ」というようなことを言いました。この時はさすがに私も辞書の助け無しで「I'm Japanese」と突っ込みました。彼は「Oh! I'm sorry! I can speak ‘コンニチワ’」と言った後、再び「日本語も話せないから、説明できない」と言いました。
ちょうどアラン・リックマンさんと同年輩くらいの方で、顔は似ていないのですが、温かでおちゃめな雰囲気がちょっと似ていて、とても素敵なおじ様でした。
階段を上って案内してくれた場所で、好きなだけ見ていい、「no money」だと言って、私たちを残し、戻っていきました。私はそれで十分でした。

そこには、紡績工場ができる前の手動の紡績機や工場で使った機会などが展示されていました。
DSC00183-1.jpg手動紡績機

また、産業革命の年表や、この工場の当時の様子の写真も展示されています。
見学していると、離れた場所にいた息子に呼ばれました。
行ってみると、水車の模型が動いています。たった今、動き始めたそうです。「俺たちのために動かしてくれたんだよ」と言われ、胸が熱くなりました。
DSC00182-1.jpg

浴槽に浸かった男性(たぶん、創設者のアークライトさん)の指先から水が滴り落ちて水車を回す、というちょっと趣味の悪い展示物

夢中で見て回っていると、mill worker's houseという写真のコーナーがあって、その中にさっき行ったばかりのベルパーの写真もありました。
紡績工は確かにベルパーにも住んでいたのだと思います。
たとえトビアスが紡績工でなくても、「昔、紡績工(スピナー)たちが住んでいた家々の袋小路=スピナーズ・エンド」をそのままの地名で呼び続けることは十分考えられると思いました。

そんなことを思い、20分ほど見学していると、さっきの方が、3人の観光客を連れて入ってきました。彼は私に「さっきはどうも」といった感じの目配せをして、奥に行き、そこで講義を始めました。椅子が二十個ばかり並んでいて、ちょっとした教室のようです。
そろそろ電車の時間だったので帰ろうと思いましたが、講義中の彼に、一言お礼が言いたくて、でも声は掛けられず、持っていた紙の裏にボールペンで「THANK YOU!!」と大きく太く書いてカンニングペーパーのように、お客さんの背後から見せると、手を振って答えてくれました。

この日ばかりは、英語がわからないことが悔しかったけれど、言葉が通じなくても、何か通じ合えるものがあったという喜びで満たされ、またしてもこっそり涙を拭っていました。

しかし、この後、駅に着くと、電車の時間を休日のものと見間違えていたことに気付き、実に50分もの間、携帯カイロを交替で使いながらとてつもなく寒い駅舎で身を寄せ合って耐えました。
そしてようやく来た列車に乗り込み、切符を買いました。暖かいシートに座り、ホッとしてしばらくすると、誰かが私の肩を叩きます。「ベルパー」と言っています。行きのベルパー駅で切符の買い方を教えてくれた犬連れのおじさんが、「ベルパーだから降りなくて良いのか。ベルパーだよ」と繰り返し教えてくれていたのです!
私は、こんどは終点のダービーまで行くつもりだったので、そう言いたかったのですが、なんと「ダービー」をド忘れしてしまいました。
「NO.Belper.」と言ったら(変な文法)、おじさんは降りていきました。ごめんなさい、心配かけてしまって。お礼も十分言えなくて。本当にイギリスの男性は紳士だと思いました。特におじさんが素敵。
そして、ハッ!と気付く私。もしかして、キップもダービーではなく、ベルパーまでしか、買わなかった??
確認してみたら、やはりそうでした。
20070403221029.jpg
クロムフォードからベルパーまでのキップ

もう慌てたのなんの。息子は「乗り越しは100ポンドの罰金だよ」と青くなっています。2万円以上!
すぐに車掌さんを探し、もう辞書も見ずになんとか買い間違えたことを伝えようとしました。声に出たのがこの言葉「I missed」自分では「間違えた」と言ったつもりでしたが、これエキサイト翻訳に入れると「私は消えました」と出ました。こんなこと言ってたのか私!!
でも、その言葉に続けて「Not Belper」と言った後、再びダービーの言葉を忘れて呆然としていると「Derby?」と聞いてくれました。
どうやら伝わっていたようです。
「Yes!Derby!」と言うと、私の切符を指して、「Derby、OK」と言ってくれました。同じ金額だったようでした。

ああ、この日は、ほとほと疲れました。
ダービーからベルパーの乗り換えが見つからずタクシー。
ベルパーからクロムフォードも切符の買い方がわからず右往左往。
工場ではツアーガイドに参加したくて身振り手振り。
最後は切符の買い間違い。
なんとかダービーに戻って、熱い飲み物を買って、ロンドン行きに乗ったときは、どんなにほっとしたことか。帰れないかと思いました。
よく生き残れました(大袈裟)
息子もこの日は「何のためにイギリスに来たのだろう?」と自問したようで、ちょっとムードも険悪でした。そりゃそうでしょうね。ろくな根拠もなく、わけのわからない田舎に連れて行かれて、何度もピンチがあって。しかもお昼は食いはぐれ(クロムフォードで買おうと思ったら、店はなし)、持参したチョコバーとミネラルウォーターだけが頼りでしたから。

夕飯には駅でチキンとバジルのサンドイッチ、春巻き(温めてくれた)を買って帰り、熱い紅茶を入れて食べ、10時前には寝ました。
* Category : 1回目(2007年3月)
Comment : (-) * Trackback : (-) |